膝の下が痛い!
膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)が起こるメカニズムと治療・リハビリ方法

ランニングによって膝が痛くなることはよくあることなのですが、痛みが出る場所は人によってかなり違います。膝の外側が痛くなったり、膝の内側が痛くなったり、あるいは膝のお皿そのものが痛くなったり。

膝の痛みといっても、どこに痛みがあるかで原因が異なります。また、必要な治療もトレーニングも随分違うので、痛みの種類をはっきりさせることは大事ですね。

今回解説する膝蓋靱帯炎(しつがいじんたいえん)は膝のお皿の下のあたりが痛くなる怪我です。ジャンプを繰り返すスポーツで頻発するので「ジャンパー膝(もしくは、ジャンパーズニー)」と呼ばれていますが、ランニングも小さなジャンプの繰り返しなので、ランナーにとっても珍しい怪我ではありません。膝が痛くなるとランニングだけでなく様々な日常生活動作にも支障が出るので、十分注意してください。

1分でわかる膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)

✔️膝蓋靱帯とは膝のお皿のすぐ下に続く靱帯のこと

✔️️繰り返しのジャンプによって炎症や微細な損傷を引き起こす

✔️成長期障害であるオスグッド・シュラッター病と原因は似ている

✔️膝のお皿のすぐ下に痛みが出るが、初期は痛みというよりも太ももの前面に張りを感じる

✔️️膝が沈み込むようなランニングフォームは膝蓋靱帯炎に繋がりやすい

✔️痛みが出たら原則安静を保ち、痛みが治まってきたら太ももの前の柔軟性をあげたり、筋力強化に取り組む

そもそも膝蓋靱帯(ジャンパー膝)とは?

まずはよく膝を観察して見ましょう。膝のお皿のすぐ下に弾力がある硬い組織があるのがわかるでしょうか?指を横にずらしてその組織を確認すると、少し繊維ばった感じも分かるとも思います。体の表面からでも触れるその組織が膝蓋靱帯(しつがいじんたい)です。膝のお皿は医学的には膝蓋骨(しつがいこつ)と言うので、膝蓋靭帯を言い換えれば膝のお皿の靭帯ということになります。

お皿の上を通ってさらに上にたどると太ももの前の太い筋(大腿直筋)につながります。スクワットをした時に盛り上がる大きな筋。運動時には非常に重要な筋です。ランニング中に体を支えてくれるのがこの太ももの前の筋であり、ランニング中の写真を切り取ると筋のすじが見えるので力が入っているのがよく分かります。膝蓋靱帯はこの太ももの筋からつながる組織です。

ちなみに膝蓋靭帯というところは反射が起こる場所なので、握りこぶしで軽くこの靭帯を叩くと膝が勝手に伸びます。ビタミン欠乏症の一つである脚気(かっけ)になるとこの反射が起きなくなるので、その検査にも使われています。

【膝蓋靭帯】

膝蓋靱帯

膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)とオスグッド病の関係

膝蓋靱帯炎と同様に膝のお皿の下に痛みが出る症状があります。それがオスグッド・シュラッダー病です。「○○病」というとなんだか大病のように聞こえるかもしれませんが、成長期の子供が運動しすぎることによって起こってしまう成長期障害の一種なのでご安心ください。

成長期の子供は身長がぐんぐん伸び、骨もどんどん成長していくのですが、筋や腱の成長はなかなかそれに追いついてくれません。オスグッドシュラッター病の場合は、未成熟な筋がスポーツなど激しい運動によって硬くなり、その結果過剰に骨が引っ張られることによっておきます。成長期の子供の場合は骨の先端がまだ骨化しきっていないので靭帯ではなく骨に異常がでます。一方、骨が完全に成長して硬くなると骨よりも靱帯の方が先に負荷に耐えきれなくなり、膝蓋靱帯炎として症状が出てしまいます。

痛みの出る場所は違えど、この二つの怪我の痛み発生要因はとてもよく似ています。オスグッドシュラッター病や膝蓋靱帯炎の場合は治療方針やリハビリに共通するところが多いので、両者のことが頭に入っていると、膝蓋靱帯炎の理解が深まるんじゃないかなと思います。

【脛骨粗面の変形】

脛骨粗面の変形

膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)の原因

繰り返しのジャンプ

膝蓋靱帯炎は「ジャンパー膝」とも呼ばれるくらいなので、ジャンプ動作が引き金になっていることは間違いありません。しかし、ただのジャンプではなく、“繰り返し”のジャンプであるというところがミソです。

膝蓋靱帯炎がよく発生するスポーツはバレーボールやバスケットボール。練習でも試合でも“繰り返し”ジャンプするため、その度に膝蓋靭帯に大きな負担がかかります。それに対して、ランニングは大きなジャンプはしないものの、小さなジャンプを“繰り返し“ます。一歩の負荷は小さくても、それが蓄積されると大きなダメージとなり膝蓋靱帯炎につながってしまいます。バスケットボールやバレーボールとは少し発生要因は違いますが、ランニングでも決して珍しい怪我ではないので、ランナーにとっても注意が必要ですね。

膝蓋靱帯炎になりやすい「沈み込む」フォーム

バスケットボールやバレーボールはしっかり踏み込んで高くジャンプするスポーツなので、ジャンプの瞬間に膝を曲げてエネルギーをためるようにして飛び上がるため、この時に膝蓋靱帯は強く引き延ばされます。

それに対して、ランニングは深く膝を曲げるような場面はありません。しかし、脚が地面についているタイミング(立脚期と呼ばれる)に踏み込むので、このとき膝蓋靭帯に負担がかかっています。トップ選手の場合、膝に負担がかからないように筋力で膝を支えることができるのですが、マラソン・ランニングを始めて間もない方などは太ももの筋力など体重を支える筋力が不十分で一歩ごとに沈み込むようなフォームになっていることがあります。また、長時間走ることで太ももの筋力が疲弊し、衝撃を受け止めきれずに膝蓋靭帯への負担が増すこともあります。不適切なランニングフォームは怪我の元。膝蓋靱帯炎に限らず、ランニング障害が起こった時はその怪我の種類によってフォームの問題点がわかることがあるので、一度しっかり動きをチェックすることが必要ですね。

膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)の症状

膝蓋靱帯炎の場合は、痛みとして現れる前になんらかの前兆が起こることが多いです。太ももの前の筋に筋肉痛が起こる、階段の上り下りがきつい、ふとももの張り感がいつもより強く感じるなどなど。違和感がでた時点で早めに処置することで悪化や慢性化を防ぐことができますし、このような体からのサインを見逃さないようにしてください。症状は軽度、中度、重度の3段階くらいに分けることができます。

軽度=運動後に軽い痛みを感じるものの、運動はいつもと同じようにできる
中度=運動中や運動後に痛みは感じるものの、運動自体はできなくはない
重度=運動中や運動後の痛みはもちろんのこと、日常生活にも支障がでて運動はなかなかできない

膝を曲げる動作はどの段階でも嫌がったり痛がったりしますし、うつ伏せになって膝を曲げようとすると太ももが張って痛いとか、お尻が浮いてくる「尻上がり現象」が起こったりします。これは太ももの前面が硬いことに由来するものなので、痛みとして感じる明確に意識される前に、しっかり太ももの前のケアを行うことが重要ですね。

膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)の改善

膝蓋靱帯炎の「痛み」に対してのアプローチ

「◯◯炎」と呼ばれるものは基本的に炎症反応が起こっている怪我なので、初期は安静が原則です。ところが、ランニング障害の場合は初期の痛みは我慢できてしまうので、練習を休まずにそのままトレーニングを続けてしまい、痛みが増すことがよくあります。痛みは体に対してのサインなので、軽視せずによく観察するようにしてください。

膝蓋靱帯が強く引き延ばされるジャンプ動作は痛みが誘発されるので、もちろんNGですが、膝を曲げる動作も膝蓋靱帯が引っ張られて痛むことがあります。日常生活含めて、膝を深く曲げることも無理にやらない方がいいです。炎症を抑えるためには消炎鎮痛作用のある薬剤や湿布を使うこともあります。薬局でも購入できますが、整形外科の先生に相談して処方してもらった方がいいですね。

怪我をしているとき、ランニングの代わりにやられることが多いバイクトレーニングですが、膝蓋靱帯炎の場合はあまりオススメしません。というのも、膝蓋靱帯が引っ張られて、痛みを伴うことがあるからです。歩行などジャンプ動作を伴わず、痛みが得ないものであれば問題なく行っても良いので、負荷の低い運動から始めるようにしましょう。膝の保護のために用いられるサポーターは膝蓋靱帯を押さえるようなタイプのものがおすすめです。膝蓋靱帯にかかる負担を減らしてくれるので、うまく活用してください。

仕事後に走ろうと思うとどうしても時間が限られていて、ウォーミングアップなどのケアがおろそかになってしまいます。でも、そこは必要最低限でも構わないので、ストレッチや準備体操などのウォーミングアップをきちんと行うようにしてください。

【フォーカスニーサポーター】

フォーカスニーサポーター

参考;フォーカスニーサポーター

膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)の「原因」に対してのアプローチ

過度なトレーニング、不適切なランニグフォームなどによって太ももの前面に負荷が過度にかかると膝蓋靱帯炎の引き金になってしまいます。太ももの前面の緊張感を抜いて柔らかくしたり、上手に使えるようになることが大事なので、その辺りのストレッチやケアもよくやるようにして下さい。膝を曲げて太ももの前を伸ばすタイプのストレッチもよく紹介されていますが、初期は膝を曲げずに行うことがオススメです。太ももの前が柔らかくなってくると膝を曲げる動作を伴うストレッチもできるようになるので、徐々に段階を上げていってください。

【大腿前面のストレッチ】

太ももの前面がしっかり緩めることができれば、今度は強化です。痛みが引いたら太ももの前面をしっかりトレーニングすることをお勧めします。スクワットやレッグプレスといったウエイトを使ってやるトレーニングもいいのですが、お勧めはランジという動作。股関節を広げグッと腰を落とします。太ももの全面がしっかり硬くなっているのを確認しながらこのトレーニングを行なってください。股関節が硬い人はストレッチにもなりますよ!このトレーニングを行う際は膝の向きにもご注意ください。膝がつま先の方向と異なる方向を向いていると膝に負担がかかってしまいます。

【ランジ】

まとめ

膝蓋靱帯炎はランナーにとっても身近な怪我の一つです。ジャンパー膝という名称が有名ですが、「ランナー膝」の一種でもあります。ただ、きちんとした治療やケアを行えば改善できないものではありません。膝の痛みに対しての正しい知識をきちんと持つようにしていきましょう!

May 20, 2019/怪我・故障/