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ランニングにおける腸腰筋の重要性
機能を理解した上で行う効果的な筋トレのススメ

コアトレーニング、体幹といった言葉が世間一般に出回りはじめてから、徐々に世の中へ認知されるようになった「腸腰筋」。研究者や競技者でなくても、メディアのおかげでこの筋の名前を聞いたことがある人も少なくないと思います。

ただ、「腸腰筋って大事だよ」と言われながらも、その正確な機能や構造まで詳しく理解できていることはなかなか無いでしょう。専門的でマニアックすぎる知識は不要ですが、曖昧なままなんとなくトレーニングを行うよりも、少し深掘りして腸腰筋を理解していくと、トレーニングの効果はより高まります!

今回はそんな”奥深い”腸腰筋に注目してみましょう。

 

腸腰筋とは

腸腰筋とは股関節周辺に発達する大きな筋の総称です。実際には「腸腰筋」という筋は存在せず、「腸骨筋」「大腰筋」の二つを合わせて「腸腰筋」と呼びます。

「小腰筋」を含むこともあるのですが、この筋は約半分の人は持っていない(※)と言われているため、今回は解説から外させてもらいました。※異常ではありません

パっと見てわかるように、腸腰筋は腰の骨(腰椎)骨盤から太ももの骨(大腿骨)をつなぐように走行しています。非常に大きくて人間の身体活動の上ではとても重要な筋。この筋がぎゅっと収縮することによって脚が持ち上げられたり、骨盤が動いたりします。「歩行」「走行」「立位」「座位」など人間が日常生活で行うさまざまな動作のほとんどに腸腰筋は深く関わっているため、そういった意味でもこの筋がいかに大切かがよく分かります。

 

腸腰筋の働き

では、腸腰筋は具体的にどんな働きをする筋なのでしょうか?体を「動かす」と同時に「支える」という役目もあります。人間が生きていく上では非常に重要な筋肉なので、その働きの概要を掴んでおきましょう!

股関節を「動かす」(屈曲させる)

腸腰筋は体幹と下肢をつなぐ筋なので、主な作用は股関節を曲げること(屈曲)です。

ただし、股関節を曲げる動作は腸腰筋だけが担当しているわけではなく、非常にたくさんの筋が連動することによって行われています。股関節を曲げるという動作は身体活動の中でもかなり重要度の高い動作なので、どこか1つの筋が仮に機能しなくなっても、他の筋でカバーできるように人間が生まれながらにして持つ”自己防衛機能”とも言えるかもしれませんね。

《股関節屈曲筋》
・腸腰筋(大腰筋、腸骨筋、小腰筋)
・大腿直筋
・縫工筋
・大内転筋
・長内転筋
・恥骨筋
・中臀筋(前部)
・小臀筋(前部)
・大腿筋膜張筋
・腸脛靭帯

これらの筋は股関節の角度によってその貢献度が変わってきます。それぞれの形状や筋の長さによって得意な動きがあるので、互いに連動しながら関節を動かしているということです。股関節を曲げるという動作は実はとても複合的な動きといえます。

上図は小栢らの研究を参考にさせてもらいましたが、この図からもわかるように、腸腰筋はいずれの角度でも活発に収縮していて、特に深く曲げれば曲げるほど腸腰筋の貢献度がより大きくなることがよく分かります。

マラソンのような長距離種目では股関節を90°も曲げることはほぼないので、長距離ランナーのパフォーマンスと腸腰筋の相関関係については、これまであまり明確に示されていませんでした。しかし、近年では長距離選手にとっても腸腰筋が重要だと述べた研究結果も報告されるようになってきています。

股関節を曲げるという動作はランニングにおいて非常に重要なものなので、腸腰筋のトレーニングは積極的に取り入れていきたいものです。詳しくは後述しますが、以前クリールに掲載された分はこちら(レース終盤の失速を防ぐ鉄則!〜オススメ「股関節トレーニング」)からも確認できるので、ぜひご覧ください。

 

股関節を「支える」(安定化機構)

腸腰筋は股関節の前面を通過するような位置関係にあります。太ももの骨の”大腿骨頭”と呼ばれる場所の前面を腸腰筋が通過するため、腸腰筋が緊張することで太ももの骨をグッと押し付けます。グロインペイン症候群の記事でもお伝えしたように、股関節の安定性に腸腰筋は深く関わっているので、もしこの筋がうまく使えなければしっかり立つことも難しくなってきます。

 

 

腸腰筋の特徴

機能が低下しやすい

腸腰筋は非常に重要な筋であることはここまで述べた通りです。ところが、その機能は低下しやすいという特徴もあります。

活動量が落ちた高齢者、座位姿勢が多いデスクワーカー、運動不足気味の現代人は特に要注意。”機能低下”というと少し怖く感じますが、あまり使わない状態が続くと「萎縮」してしまったり、「硬くなる」ことが”機能低下”だと考えてください。本来動くべき筋がうまく使えないと、日常生活に大きな支障が出てしまいます。もちろん運動パフォーマンス(ランニング)に影響を及ぼすということはは言うまでもありませんよね。

現場的な話でいうと、デスクワークで長時間作業した市民ランナーが仕事後に走る場合は注意が必要だなといつも感じています。腸腰筋が硬くなった状態で、十分なウォーミングアップもなく走り始めてしまうと怪我の原因になってしまうためです。非常に大事な筋肉なので、意識的にケアしてください。

深部に位置するため表体表から触れることが難しい

人間の体は筋や脂肪など様々な組織が幾重にも重なる事で、内臓を保護しています。深部に位置する腸腰筋は体の表面から触れることが少し難しい筋肉です。もちろん、体つきによって触りやすい人もいますが、どんな体型であっても体表に位置する筋肉のように直接がっつり触って緩めることは極めて難しいといえます。

表面の筋であればその変化に気付きやすい(細くなった、硬くなったなど)のですが、深部の筋はそうはいきません。通常のストレッチを行なっていてもわずかな違いで”効かないストレッチ”になっていることもあるので、注意が必要です。

 

腸腰筋のストレッチ

上述したように、腸腰筋は非常に深部に位置する筋なので、伸びているという意識が持ちづらく、目で確認することもできません。したがって、意識すべきポイントをきちんと理解できているかどうかが大切です。目的や期待される効果によってストレッチの方法はかなり変わってくるのですが、今回は「腸腰筋をメインで伸ばすストレッチ種目」と理解してください。

 

腸腰筋ストレッチ(1) 〜立て膝での前後開脚〜

《方法》
・立位で伸ばしたい方の脚が後ろになるように前後に開脚(やや広め)
・前脚の膝を少しずつ曲げながら、後ろ脚の膝が地面につくくらいまで体を落とす
・後ろ脚の股関節前面が伸びるように意識する

《注意点》
・ゆっくり息を吐きながら体を落としてく
・無理に伸ばしたり勢いをつけたりしない
・股関節の前面が伸びていることを意識する
・可能であれば後ろ脚の膝が地面についたあとやや骨盤を後傾するようにしてストレッチを強める

腸腰筋ストレッチ(2) 〜立て膝での前後開脚+上半身側屈

《方法》
・立位で伸ばしたい方の脚が後ろになるように前後に開脚(やや広め)
・前脚の膝を少しずつ曲げながら、後ろ脚の膝が地面につくくらいまで体を落とす
・後ろ脚の股関節前面が伸びるように意識する
・後ろ脚側の腕を上にあげて側屈する

《注意点》
・ゆっくり息を吐きながら体を落としてく
・無理に伸ばしたり勢いをつけたりしない
・側屈の際に股関節の前面がより伸びるように意識する

腸腰筋ストレッチ(3) 〜立て膝での前後開脚+膝屈曲

《方法》
・立位で伸ばしたい方の脚が後ろになるように前後に開脚(やや広め)
・前脚の膝を少しずつ曲げながら、後ろ脚の膝が地面につくくらいまで体を落とす
・後ろ脚の膝を屈曲してかかとをお尻に近づける

《注意点》
・ゆっくり息を吐きながら体を起こしていく
・無理に伸ばしたり勢いをつけたりしない
・無理なストレッチになるようであれば、台を置いて後ろ足をそこに乗せる形でOK

 

腸腰筋のトレーニング

腸腰筋のトレーニングもたくさんの方法があります。

股関節の屈曲に関わる動きは基本的に腸腰筋が関わるのでスクワットやランジといった動きは代表的なトレーニングと考えてください。ただし、股関節を曲げる角度によっては、腸腰筋への刺激が思ったほどかからないこともあるので、腸腰筋をより強化したいと思った場合は深い股関節屈曲を意識することがポイントです。

腸腰筋トレーニング(1) 〜フロントランジ

《方法》
・立位の状態から脚を一歩前に出す
・前に出した脚の股関節が深く曲がるように意識
・台を使って股関節が深く曲がるように誘導しても良い

《注意点》
・勢いをつけすぎない
・股関節の屈曲を一番に意識する

腸腰筋トレーニング(2) 〜ボールスタンドアップ

《方法》
・椅子に座った状態で片脚の股関節にボールを挟む
・挟んだボールが落ちないように気をつけながら椅子から立ちあがる

《注意点》
・股関節でしっかりボールを挟む(股関節の屈曲が甘くなるとボールが落ちる)
・立ち上がった時は立脚脚はしっかり膝を伸ばす
・ふらつかないように注意

腸腰筋トレーニング(3) 〜バランスボールキックバック

《方法》
・両脚をバランスボールの上に乗せて腕立ての状態になる
・両股関節を曲げながらバランスボールを自分側に引く

《注意点》
・バランスボールの上で体勢を崩さないように注意
・お尻が落ちて腰が反らないように注意

腸腰筋トレーニング(4) 〜座位内旋+レッグレイズ

《方法》
・椅子に座った状態で脚を組む
・組んだ足を内側にぐっと引き寄せるようにす
・引き寄せた足が緩まないように注意しながら膝を胸に近づける

《注意点》
・内腿(内転筋群)の筋肉の収縮が緩まないように注意
・足を持ち上げる際に手で椅子を掴まない

 

 

まとめ

冒頭にも書いたように、腸腰筋は非常に”奥の深い筋”です。用語の周知が先走って、その本質が十分に理解されていない現状を少し感じていたのでこういう形でまとめさせてもらいました。重要な筋であるからこそ、その理解を深めることは非常に重要ですね。

このテーマは話が尽きないと思っています。現在進行形で色々な情報が更新されているので、RUNNING CLINIC内でのこのテーマに関するお話は随時アップデートしていきますね。

October 29, 2019/怪我・故障/

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