体重が落ちれば本当に良いのか? 記録向上を目指すランナーのための減量方法とは?

アスリートの美しく引き締まった身体は、多くのランナーが望む理想形ではないでしょうか?体幹を始めとした筋力がしっかりありながら身軽であれば、まるで”飛び跳ねる”ように走れるかもかもしれません。その時、走る楽しみが更に増してくれるかもしれません。

しかし、そのような身体にすることは誰もが難しいと感じているはずです。どのような食事をすれば理想の身体に近づけるのか?身体を絞る方法はどんなやり方でも良いのか?そんな『減量』の基本的にな考え方・方法について今回はお伝えしていきます。

 

ランナーにとっての減量

今、この記事をご覧になって下さっている方の目的は様々だと思います。ダイエット目的で始めたランナーの方、健康維持のためのランナーの方、競技力向上を目指すランナーの方などなど、ランニングの“走り方”はそれぞれです。目指す方向が違えど、どのランナーにも”一定の範囲”で共通することが、『軽い体重の方が走りやすい』ということです。ランニングは自分という重りを、いかに長く、いかに速く動かすか?が本質的な動作。重りが少ない程、動きやすくなることはどなたも望む姿ではないでしょうか。

しかし、ただ体重を少なくすればよいという訳でありません。競技性としても、健康のためにも一定の範囲内に身体の構造を保つことが必要になります。身体はいくつかのパーツでできています。身体は脂肪を多く含む脂肪量(fat mass:FM)と、体重から脂肪量を除いた除脂肪量(fat-free mass:FFM)の2つに分けられます。FFMは更に意図的な動きを生み出す骨格筋(腹筋やふくらはぎなど)を始め、骨・血液・臓器・神経など脂肪組織を除いた様々なパーツを含めたものになります。どのパーツもなくてはならないものにため、どれを、どの範囲で減量として減らしていくかが大切なポイントになります。

 

体重はどのようにして変わる?

身体はいくつものパーツでできていますが、どの組織も基本的には『エネルギーバランス』によって重さが保たれています。エネルギーバランスとは「体の中に入ってくるエネルギー」「体から失っていくエネルギー」が天秤にかけられた状態をいいます。

前者は食事(栄養素)から得られます。エネルギーとなる栄養素は炭水化物・たんぱく質・脂質の3つになり、”3大栄養素”や”エネルギー源栄養素”として表現されることが多くあります。【炭水化物(糖質)】は体内ではグリコーゲンとして肝臓や筋肉などで蓄えられ、強度の高い運動時のエネルギー源として使われます。ゆったりとしたジョギングペースでも使われるエネルギーの半分はグリコーゲンからのエネルギーが占めています。【たんぱく質】は筋肉を始め、内臓や骨などの様々な組織の代謝に必要な材料となります。エネルギーも持つことから、エネルギー不足の状態時にエネルギー源として用いられることもあります。【脂質】はエネルギーバランスがプラスになった時、脂肪組織内の脂肪細胞に蓄えられていきます。体内に貯蔵されるエネルギー源として重要な栄養素であり、エネルギーを必要とする時には脂肪組織から各組織に供給されていきます。

後者は生命維持のために何もしていなくても消費する「基礎代謝量」と、日常の活動によって消費する「活動時代謝量(運動+生活活動)」、そして食べた物を消化吸収するために消費する「食事誘発性熱産生」の3つの合計値になります。これらは、先ほどのエネルギー源栄養素を材料として、その時々に必要となる機能をはたしてくれます。この両者のエネルギーの合計値がプラスになるのか、マイナスになるのかによって”体重”が変動してきます。

ここで言う”体重”は、比較的長期的なスパンで見た値になり、実際に体感する1日単位といった短期的スパンの体重変動とは少し異なってくることを区別しておきましょう。短期的に変わる体重には、このエネルギーバランスだけでなく便などの排泄状態、体内の水分量の状態、条件の違いによる測定誤差など、様々な要因によって変動してきます。そのため、実際にはこれらの要因を含みながら細かく上下動を繰り返して減少していきます。毎日体重計測をしていて大きな変動があると不安な気持ちになりますが、このことを理解しながら気負わずに継続していくことが大切になります。

 

体脂肪を理解して減量を

走るためのパワーを生み出すのが骨格筋(≒FFM)です。そのため、この骨格筋を維持していくことが減量において大切なポイントの1つになります。骨格筋が減ってしまうと、走るためのパワーが減るだけでなく、エネルギーを消費する場所も減ってしまいますすると減量しにくくなる身体になるため、骨格筋量の維持はとても大切です。

一方、走りを阻害する要因となるのが体脂肪です。パワーの出力に直接関わらない体脂肪を減らすことで、重りを減らして走ることができるようなります。つまり、骨格筋量を維持しながら、体脂肪をうまく減らしていくことが理想的な減量の方法になります。

ただ、重りになる体脂肪も本来は身体の機能を担う組織として存在するものです。体脂肪は炭水化物・たんぱく質・脂質といったエネルギー源栄養素の余った分を、脂肪というコンパクトな形にしたものになります。炭水化物・たんぱく質は1g当たり4kcalのエネルギーを持ちますが、脂肪は1gで9kcalと同じ重量でも2倍強のエネルギーを持つことができます。逆に考えると、体脂肪として増えた体重を減らすことがいかに大変かが分かるかと思います。後に後悔しないように、日頃から気を付けなければならないことを実感しますね。

その体脂肪はエネルギー源として使われるだけでなく、様々な機能を果たす大切な組織の1つです。皮膚の下部(皮下脂肪)に存在すると体温保持、内臓などの組織の周りに付着していれば物理的な衝撃からの保護、また、細胞膜の構成成分として細胞内外の溶液を隔てる役割、そしてその“脂肪の膜”をスムーズに通過するステロイドホルモンの材料としても脂肪は使われています。このような機能を持つこともあり、体脂肪率にもこれ以上減らしてはいけない下限値(男性で5%、女性で12%)があります。この脂肪の役割を意識して減量を行っていかないと体の不調が生じ、本来の目的でもある走力向上に繋がらないことになります。

 

計画的に、ゆっくりと

ランニングを速く走るには、ランニングに必要なパワーを生み出す筋量を保持しながら、重りとなる組織となる”余分な”体脂肪量を減らしていくことが鉄則です。しかし、体脂肪率の下限値に達していないからと言って、急速に体重を減らしてまってはいけません。過度な食事制限をして、運動量(エネルギー消費量)を増やせば大抵の場合は大きく体重は減りますが、体重の減少割合が大きい分その弊害が大きくなります。

ランナーは1年を通してレースがある方が多く、常にいいパフォーマンス状態でいることが求められる方もいます。冬の時期はフルマラソンなどの長いロードレース、春先からはトラックレースやトレイルラン、ウルトラマラソンなど1年を通してレースを入れることができます。その中で間違った減量を行うと、レースでのパフォーマンスを損なう原因にもなります。厳しい減量で体重減少割合が大きい減量では、強度の高いランニング時に必要なグリコーゲンの貯蔵量の減少や、エネルギーを生み出すために必要な酸素を運ぶ赤血球の濃度が低下する貧血を起こすリスクが高まります。また体内水分バランスも悪くなり、熱中症のリスクも高まります。これらのリスクが積み重なり、減量をしたつもりがパフォーマンス低下の逆効果を生む結果にもなります。そのため、ランニングをしながら減量を進めていくためには、体重減少割合を少なく、つまり『ゆっくりとした減量』が理想的な方法になります。

「いやいや、そんなにゆっくりとしていては目標レースに間に合わないよ。」実際にそうなる場合もあるかもしれません。ですが、それでもし体重が減ったとしても、本当の目的となるレースでの記録達成ができるとは限りません。そうならないためにも、長期的な計画を基にして食事や運動の調整を行っていくことが大切になります。

  • 最終的なゴールはいつで、どのような状態になっているのか?
  • 現在どんな状態で、ゴールまでどれのような差があるのか?
  • 現実的にゴールまでたどり着ける”経路”なのか?

このような綿密な計画をして行うことが、体も心も喜ぶ減量達成に大切なことです。

 

専門家に相談を

では、実際にどんな計画を立てていけばよいのか?無理な計画を立ててしまうと、目に見えないリスクや途中でストレスを抱えてしまうことも多くあります。そのため、”安全運転”で減量を進めていくには月1㎏前後の減少スピードがよいでしょう。

体脂肪を1㎏減らすには、エネルギーバランスで約7,200kcalのマイナスを作る必要があります。1日当たりに換算すると7,2000÷30日=240kcalとなります。つまり、1日の消費カロリーが摂取カロリーよりも240kcal多くすると、『筋量を維持しながら、体脂肪量(体重)を1㎏減らす』ことが可能になります。

しかし、この数字が全ての方に当てはまるわけではありません。その人に合った方向性があります。減量がしたいと思った場合は、”栄養の専門家”でもある管理栄養士に相談・サポートをしてもらうようにしましょう。また、ランナーであれば、ランニングに精通した管理栄養士(または公認スポーツ栄養士)に見てもらえると、パフォーマンスも維持・向上が望めるはずです。

ウエイトコントロールに限らず食事でお悩みの方はぜひ直接ご相談ください(→UNITED STYLE公式HP

 

January 7, 2020/栄養・サプリメント/