「走力」と「調子」を正しく理解する
調子を上げるための大切な観点

何か物事が思ったように上手く行かなかった時、「調子が悪かった」という言葉を口にした経験は誰もが一度や二度あるのではないかでしょうか。勝ち負けがつくスポーツの世界においては、調子の良し悪しを引き合いに出すことは珍しくないですし、むしろ大事な要素です。でも、この「調子」って何者なのか考えたことがありますか?

もし、「調子」の正体が分かっていないまま「調子が悪かった」という言葉を多様していたとすれば、注意が必要です。何となく使っているだけでは、結果が出なかった要因を分析することには繋がりませんし、同じミスを繰り返してしまう可能性もありますからね。

「調子」は捉えにくいものではありますが、決して文字にできないわけではありません。レースシーズンだからこそ、この「調子」というものをぜひ理解してみてください。

今回はこの「調子」と「走力」について詳しく解説していきます〜

 

「調子」とは?

「調子」とはなんでしょうか?「調子」の良し悪しを語る上で、「走力」との関係を考える必要があります。というのも 「調子」は「走力」の発揮度、あるいは「走力」を発揮するための条件の1つと考えられるからです。

ランニングの場合、走力=基本的な実力であり、調子=身体的&精神的コンディションですが、走力があっても、調子が悪ければ、思ったように走れません。

少しややこしくなりそうなので、図で見てみましょう。

走力を上げることが”トレーニング”であり、調子を上げることが”コンディショニング”。この両者は似て非なるものですが、コンディショニングだと思ってやっていたことが実はトレーニングだったというケースは度々見受けます。フルマラソンの直前に駆け込みで30km走をやることなども残念ながらトレーニングとコンディショニングを混同したものと言わざるをえません。

トレーニングとコンディショニングが混同してしまうと、大抵の場合は思った通りに走れません。もしくは本来到達できるはずだった水準まで到達しません。自分の現状は走力不足なのか、調子が悪いのか見極めた上で、それに即した取り組みが重要です。

 

「調子」が悪いとは?

では、「調子」が悪いとはなんでしょうか?そして、その要因は?

まずいちばんに考えられる要因は”身体機能面でのコンディションの低下”です。また、勝負事であるスポーツであれば、「心」も無視することはできず、”メンタル面でのコンディションの低下”も非常に大事な側面です。

注意すべきは、”体調が悪い”ということと混同しないこと。風邪気味とか、気分が悪いとか、そういったものとは根本的に意味合いが違います。体調が悪いのに気合いでなんとかする・・・と言うのはさすがにNGなのでこの部分の見極めは必須です。ご注意ください!。

身体機能面

まずは身体機能面で調子が悪い(コンディションの低下)についてです。これは「疲労」もしくは「トレーニングが整っていない」の2つに大別されます。

◼︎疲労

「疲労」の方は分かりやすいですね。激しいトレーニングや不十分な休息によって体に疲労が蓄積していることであり、この場合、当然調子は落ちます。本来のパフォーマンスと程遠い状態になり、体が思ったように動かせなくなってしまうということですね。

疲労によって調子が落ちている場合は取り組むことも非常にシンプルで、溜まった疲労を抜けばいいと言うことになります。非常に分かりやすく原因も対策も難しくはありません。

しかし、休むのが苦手?罪悪感がある?休まないのが美学?!という方もいるでしょう。疲労が抜ければ休む形は基本的にはなんでもOKです。ただし、自分で休んでいるつもりでも回復している感じがしないというのであれば、休み方自体に問題がある可能性が高いので、そこは見直してみることを強くお勧めします。

稀に慢性的な疲労状態によってオーバーユース症候群として症状が複雑化することがあります。これは少し特殊なケースなので、必ず医療機関に行き専門家に相談してくださいね。

◼︎トレーニングが整っていない

それに対して「トレーニングが整っていない」とはどういうことでしょうか?トレーニングを整えるといってもあまりピンとこないかもしれませんが、中長期に渡る、スタミナ・スピード持久力・スピード・筋持久力等の協調だと理解してください。つまり、日々テキトウに走って、月間走行距離だけを意識するような取り組みではダメだと言うことです。

時期と状況にあったトレーニングをバランスよくこなしていくことで、体はきちんと動くようになってきます。逆にここがイイカゲンだと調子の良い状態は作れないですし、良い状態をキープすることも難しくなってしまいます。

トレーニングに関する具体的な理屈や方法論は今回のテーマからずれるため、割愛させてもらいますが、詳しくは別記事をご覧ください。

参考1)マラソンの記録向上のために必要なトレーニングとは?「最大酸素摂取量」の理論と実践

参考2)マラソントレーニングの基礎は走り込みにあり!「有酸素能力向上」の理論と実践

参考3)マラソンにおける持久力を考える〜「心肺」と「脚」

メンタル面

次にメンタル面での不調(コンディションの低下)に注目してみましょう。

根性論?!という話で終わらせてはいけないのが「メンタル面での調子」です。勝負とは何かと比較することです。比較の対象は「他人」だけでなく「自分」も含まれるので、練習の消化度やレース結果に一喜一憂することもあります。

一つ一つの結果は非常に大切ですが、それによって何か大きく引きずられるのは得策ではありません。メンタルトレーニングを行なって心を整えるアスリートも増えてきましたが、ここもしっかり方法論を持っておくことは重要ですね。

 

「調子」と「走力」の関係

「調子」と「走力」は常に表裏一体の関係にあります。トレーニングの消化度疲労目標レースまでの期間など様々な要素を踏まえた上で現状(自分の現在地)をはっきりさせることが大事です。

ケースごとに解説していきたいと思います。

走力は高いが調子が悪い時

《典型的なランナー》
・練習がしっかりこなせているランナー
・鍛練期を経て力をつけてきたランナー

練習がしっかりこなせているランナーであれば、通常レースの1ヶ月前くらいはこういった状態になっていることが多いです。トレーニングをきちんと積めていれば当然疲労が溜まってくるので、必要な負荷をしっかりかけられている証拠ですね。

もちろん、 このままの状態でレースを迎えるわけにはいかないため、2〜3週間かけてコンディショニングを行うことで調子が上がっていきます。トレーニング→コンディショニング→レース」という一連の流れが順調な時の最も理想的なパターンといえます。

走力が低く調子も悪い時【鍛練期】

《典型的なランナー》
・鍛練期の真っ只中にいるランナー
・トレーニングを始めたばかりのランナー

走り込みの時期など、練習がぎゅっと詰まっている時は、疲労が溜まっていますし、求める走力水準に比べると相対的に走力が劣ります。これが上図でいうところの最下層ですね。調子も悪けりゃ走力も低い・・・となると、いいことなしのように思えるかもしれませんが、トレーニングの真っ最中であれば普通はこの状態です。

より正確に言えば、 鍛練期ならこの状態を意図的に作る必要があります。あえて調子を落とすというイメージがしっかり持てていると、体が動かなくても今はそういう時期だと納得して過ごすことができますよね。

ご自身のトレーニング計画の中でこの時期があるかどうかチェックしてみてください。

走力が低く調子も悪い時【レース期】

《典型的なランナー》
・鍛練期に十分練習が積めずにレースが近づいているランナー
・鍛練期の最中に大事なレースがあるランナー

こちらは2つ目のケースと違い、レースが近づいているにも関わらず、走力も十分伸びてないし、調子も上がらないという状況です。

このような場合、ついギリギリまでトレーニングを行なって走力をあげようと思いがちですが、時間的な制限を考えるとどこかで調子を上げることにシフトする必要があります。求める走力にまで到達していなくても、レースが控えているのであれば今の自分の力をしっかり発揮できるようにすることが重要なのでコンディショニングは必須ですね。

指導の現場ではよく「現状ベスト」という言葉を使います。目指すべき目標に対して最も好ましい状態(Best)ではなく、今の自分が持つ力を最も発揮できる状態(Better)を作っていくことを目指しましょう。

 

「調子」を維持する

調子が良いときのトレーニング

では、「調子」が良い時のトレーニングは何をすべきでしょうか?

思わずピークが早く来てしまったということも珍しい話じゃありません。ただ、調子が良いから練習でもガンガンいくべし〜ではないのはなんとなく分かりますよね。

調子が良い時はトレーニングの精度が高くなります。量(距離・時間)を増やしても、質(ペース・追い込み度・頑張り度)を上げてもでききゃうからこそ、やりすぎに注意しなければいけません。しかし、やりすぎを気にしてトレーニングの量や質を落としてしまえば、刺激として不十分で結果的に走力も調子も落ちてしまいます調子は上げることよりも維持することの方が圧倒的に難しいですね。

そもそもトレーニングは「計画」に則ってすすめられているので、調子が早く上がってくるというのは、目標レースから逆算して立てたスケジュールが予定以上に順調にこなせたということになります。量的にも質的にも余裕が出てくるので、調子を「維持」するためには量や質を上げることなく、計画していた練習を余裕を持って確実にこなしていくとスタンスが原則です。

ただし、

(1)目標となるレースまでの残された時間が十分にある
(2)そもそも目標設定が不適切(目標が低すぎた)
(3)リスクを犯してでもより高いパフォーマンスに到達したい

という場合はトレーニング内容を上げることも選択肢の一つとして出てきます。当然綿密にスケジュールを組まないと調子が落ちてしまうため、イチかバチかのチャレンジだと思ってください。

調子は消耗品!?

また、調子は「消耗品」と認識することがちょっとしたコツです。使えば減りますし、貯めるには一定の時間が必要です。食べ物をイメージしてもらえると分かりやすいのですが、一番いい食べごろをすぎると熟しすぎて本来の味より劣ってしまいます。逆に熟し切っていなければこちらも美味しく食べられないですよね。

調子をピークに持ってくるのはここぞというときです。練習では大事に使いましょう。使い切るのはレースの時くらいですね。

そして、調子が良い時は調子に乗らない・・・これが鉄則です!

 

まとめ

レースシーズンということで、今回は「調子」について詳しくまとめてみました。詳しくといっても、具体的ではない部分も多いのですが、各論や方法論は別記事にて適宜お伝えしていくので、その際にご覧ください。

「調子」はナマモノです。良くなったり悪くなったりを繰り返すものなので、そういった波に惑わされず今やるべきことをきちんと理解できることは重要ですね。

目標レースでみなさんが力一杯走れることを心から祈ってます!!

 

 

November 8, 2019/トレーニング/