マラソンにおける持久力を考える〜「心肺」と「脚」

いわゆる心肺機能(=呼吸循環器系の能力)と、脚(=もっぱら脚筋の筋持久力)の関係について、ランニング的に考察します。(ランニング以外の面では、また別にいろいろあります。)

「心肺」と「筋力」について、まったく区別がつかないということはまずないと思いますが、走っていると、呼吸がハーハー、心臓がバクバク、脚はガクガク…と、どちらにもいろいろなことが起こってきますね。逆に、ハーハー・バクバクしているのに脚はまだまだ元気だったり、呼吸や心臓は楽々なのに脚が重く、もう動かなくなってグダグダになったり~。

このように心肺と脚とは複雑な関係にあります。「脚づくり」という言葉もありますが、そもそもトレーニングの目的と効果という点では、心肺と脚、どちらにどういう負荷をかけて、どういう効果を求めていくと良いのかという問題があります。

そう考えると、インターバル・トレーニングは心肺と脚、どちらにどんな負荷をかけるのか~。そしてLSDは、どちらにどんな負荷をかけるのか~ということを考える必要が出てきます。なんでもかんでも、より長く・より速く走れば良い(=トレーニングとして効果的)というわけではありません。

そもそも、ランニング的に、心肺はどのような、そして脚はどのような働きをして私達のランニングを支えているのか─。そこからきちんと理解していかないと、トレーニングの方向性も定まりません。そのあたりをきちんと理解した上で、効率の良いトレーニングに取り組んでいく手立てを考える必要がありますね。

 

「心肺機能」とは?

人間が走るにあたって、エンジンと言われるのは何か?それは、心肺!…ではなく、筋肉です。心肺は、筋肉に酸素を供給しているに過ぎないのですがその酸素をどれだけ供給できるのか~筋肉の方は、その酸素を生かして、どれだけのエネルギーを使えるのか!!というところが鍵です。

まあ、そのあたりはあまり専門的なことを考える必要はないので、心肺と筋肉はこの供給関係において連結しているということだけ承知しておいてください。

そしてこのエンジン─。ざっくりで言うと、ハイパワー・ミドルパワー・ローパワーと3種類のパワーシステムからなっています。もちろんそこには得手・不得手があり、ハイパワーはメチャクチャ発揮できるけど、ローパワーは弱い…とか、そのまったく逆とか、非常にバランス良く整っているとか、いろいろあるわけです。

これは、先天的な能力の部分と後天的な能力の部分の両方があります。我々ランナーの場合は、直近(1~2年)のトレーニング内容に大きく依存したります。当たり前のことですが、ハイパワーは持続時間が短く、ローパワーは持続時間が長くなります。基本、パワーというのはそういうものでもありますね。

そういう、ハイ・ミドル・ローのエンジンを上手に駆使して、私達は最も効率良く、効果的にエネルギーを産生して「走る」わけですが、そのエンジンの使用割り合いが、1kmの全力疾走・5kmや10kmのレース、ハーフマラソン、フルマラソン、更にはウルトラマラソンで違うわけです。逆に言うと、トレーニングは、それを前提に、どうやって、どういうパワーの能力を上げていくのか~といことを考える必要があるということになります。

《パワーのレベル×持続時間》

結果的にこれは、ほぼレースペースを構成する能力となります。この見積もりをあやまり、レースでオーバーペースになると失速して失敗するわけですね。ただ、実際のランニングのパフォーマンス(レース結果)を決定づけるのは、この心肺の能力だけではありません。そこにいわゆる「脚」が関わってくるのです。

 

「脚」とは

「脚」とはなんぞや?

マラソンを走るのに、脚が強い方が良い~というのは、なんとなくそうかな~とは思うと思います。では、より具体的に、どんな「脚の強さ」が必要なのかを考えていきましょう。

これ、実はけっこう複雑です。だからこそ、混同しちゃっているようなところもけっこうあるかも知れませんね。

足の強さ

まずリストアップ?してみると~

全部独立しているわけではありません。むしろ密接に関わりを持っています。が、密接に関わっているからこそ、ちょっと勘違いして混同してしまっているところも出て来たりしますね。

これとは別に、ジャンプやダッシュに必要な脚のパワーというのもありますが、我々ランナーは、そういうのは使いません。そういう種類の強化は必要ないのです。

で、一般に「マラソンの脚」というと、(1)がメインになります。(2)は(1)を支えます。耐性が低ければ、距離も踏めず、ペースも上げられませんので。(3)(4)は、まず(1)がしっかりとしていることが大前提で、その上での発展形です。ここから入ってしまい、逆に(1)が疎かになってしまうこともありますね。

そういうことで(1)~脚持ちです。脚持ちと言うと、長い距離をゆっくり走ることをイメージするかも知れませんが、長い距離を速く走るのも、短い距離をもっと速く走るのも、脚持ちが必要なのです。

(2)~(4)も大切なのですが、今回のテーマ、「心肺と脚」ということだけ考えると、やはりターゲットは(1)になります。

まとめると、マラソン・トレーニングは、<長い距離を走る脚持ちと、速いペースを走る脚持ちと、それに見合った心肺機能を鍛えることを目的とする>ということになります。

え、これ全部いっぺんにやるの?どうやってやるの?ってことで、徐々にその方法論について考えていきます。

そういう視点で見ると、LSDって?~インターバルトレーニングって?~ペース走でなんのために、どうやるの?って話にもなってきますね。そういうところをしっかり理解していくことが重要なのです。

脚持ち

<長い距離を走る脚持ち><速いペースを走る脚持ち>とがあるのなら、LSDで前者を、インターバルトレーニングで後者を鍛えればOK!…なのかというと、事はそんなに単純ではありません。その中間もあるので。というか、いくつもの層のグラデーションになっているのが本当のところです。

まあ、LSDを反復していくことで、<長い距離を走る脚持ち>が向上していくのは確かです。初心者のうち無謀にもフルマラソンにチャレンジし、かなりゆっくり走っているのに、途中から脚が棒になって走れなくなってくる…ということもありますが、こういうことはキャリアを積み、LSDのような練習を反復していく中で自ずと解消されてきます。

スピード練習をやれば、<速いペースを走る脚持ち>が少し向上するのもまた確かです。ただ、グラデーション部分をほったらかしにて、ゆっくりか速いかのどちらか!という極端なことをやっていると故障しやすくなります。グラデーション部分をもっと他の練習(ロング走やミドル走等)でしっかり埋めていかなきゃね~。

で、心肺機能の方です。ゆっくり走れば、心肺は弾まず、おしゃべりしながらでもスイスイ走ることも出来ます。速く走ればハーハー、そしてゼーゼーと呼吸が弾み、余裕がなくなってきますね。

更に!ゆっくりペースなのに、長く走っているうちに、ペースは上がっていないのに、いやむしろス少しダウンしているのに呼吸が弾んでくることがあります。マラソンレースの後半~終盤にそういう経験をした方も少なくないのでは?

これは、筋疲労による筋力ダウンが生じ、同じように走ろうとしても、より多くの労力(パワー)を必要とすることで、もっと多くのエネルギーを産生しなければならなくなるためです。てことは、もっとたくさんの酸素が必要…。だから呼吸がハーハーする。ゆっくりペースなのに…。

そうすると、心肺と脚(筋)は、一緒なのか?~という話にもなりますが、一緒!…ではありません。ある局面では連動しますが基本的には別々なのです。そこが難しいところですね。一緒ではないが、連動はする。家族ではないが、知人ではある~みたいな感じでしょうか。

一緒ではないが、連動はするので、すごく頑張ってしっかり走れている場合は、どちらもフル回転で仕事が出来ています。一方、ヘタれてくると、どちらか強い方が弱い方に合わせざるを得ない状況が生じます。連帯責任か…?

この強い方・弱い方の判断はけっこう複雑&微妙なのですが、それを見極めることで、トレーニング課題も違ってきます。もっと心肺に負荷をかけるのか、それとも脚をつくるのか~。脚なら、それはどんな脚持ちなのか~というところですね。

スピード持久力

より速いペースを、より長く維持する能力が「スピード持久力」です。このスピード持久力を高めるために、LSDだけでもなく、インターバルトレーニングを組み入れるだけでもなく、ロング走やミドル走といった、適切なペースで適切な距離を走る練習が必要なわけです。これがマラソントレーニングの軸となる部分だといっても過言ではないですね。

で、このスピード持久力は「心肺」の部分~つまりは、一定の酸素の摂取によって、特定の強度の運動を継続するということに関するものです。

これに対し、もう一方で「脚」の部分があるわけです。これはざっくりでいうと「筋持久力」の部分になります。スピード同様、筋力にもグラデーション部分というのはあるわけで、瞬時に大きなパワーを発揮できるような筋力があれば、少しそのパワーを落としたレベルでの運動を長続きさせることも出来る…というわけではありません。

で、通常…というか、一般的に…というか、スピード持久力の向上を目指すトレーニングと筋持久力の向上を目指すトレーニングとは、けっこうかぶります。まあ、裏腹な機能でもあるわけなので、当然といえば当然ですね。

そういうことで、上手いことその効果を得ることが出来れば、あまりあれこれ考えなくても、そのロング走なりミドル走なりの適切な負荷での反復で両方とも向上させていくことが可能です。

が、現実は厳しく…。なぜか、両方バランス良く向上しないことも少なくないのです。同じ負荷を心肺と脚、両方に同じようにかけても反応(効果)は異なる…。まあ、そもそもが違うものなので仕方ないのかも知れませんが、そういうこともまた普通に起こります。

一般的な傾向では、同じ負荷をかけ続けても、心肺の方が脚よりも効率良く向上します。もちろん誰も彼もではないのですが、けっこう多くの人に当てはまるパターンであり、結果的に、脚がウィークポイントになってくるものです。

で、この対策~つまりは、筋持久力の補修という取り組みがあります。

 

スピード持久力を高めるための具体的方法論

筋持久力の補修~この場合の補修は、心肺にあまり負荷をかけず、脚=筋持久力だけ上手いこと向上させようということです。

心肺にもぜんぜん負荷がかからないように出来るわけはないので、正確には、心肺 < 脚 となるようなトレーニングを考えていくことになりますね。前回のおさらいですが、普通に走っていると、なかなかそうはならないものです。

さて具体的には~というと、起伏を使います。起伏も、頑張って走れば、脚は元よりやはり心肺にも来ますので、そこは一工夫が必要です。

方法論その1 ゆっくり起伏走

ゆっくりであることは、心肺に過度の負荷をかけないことと、LSDやロングジョグ本来の脚づくりの効果にも期待するからです。夏の走り込みに高原や山地を利用するのも、涼しいからというだけでなく、この「起伏をゆっくり&長く」というところに、走り込みの初期段階ならではの効果を期待するものです。いわゆる峠走などもそうですね。

こういうのは、初期段階から頑張ってペースを上げて走ってはいけません。ゆっくりペースで、心肺 < 脚 となるような負荷をコントロールしてきちんとかけることに意義(効果)があるわけです。

これがトレイルランニングになると、脚もですが、呼吸にも強い負荷がかかってしまうことにもなりかねませんので、少し取り組みが難しくなることもあります。

方法論その2 坂道インターバル

その1と同様に、心肺 < 脚 となるよう、負荷のコントロールが必要です。「え、インターバルなのに?」と思うかも知れませんが、そうなのです。そのコントロールは、やはり1本あたりのスピードレベルを大きく落とし、本数をしっかり確保することにあります。これも、頑張ってスピードを上げ、ハアハアしながら本数少なめで切り上げてしまうと、目的と効果が違ってきてしまいます。

今回は、あくまでも「脚づくり」~しかも、心肺に後れを取らないように脚を選択的に強化することをやろうとしているわけですから、このセーブは非常に重要です。

坂道インターバルとか坂道ダッシュとかいうよりも、坂道流しと考えても良いくらいですね。その代わり、みっちり本数をこなし、じわじわと脚に負荷をかけます。ボディブローのようにです。

方法論その3 ファルトレク

国内ではあまり馴染みのない練習方法ですが、クロスカントリー(クロカン)に、もうちょっと工夫を加えたような練習です。クロカンも未経験という方も少なくないかも知れませんが。

起伏や不整地を利用し、スピードの上げ下げを意識的に加えながら行う変化走のようなもので、これも坂道インターバル同様 負荷が 心肺 < 脚 となるように上手にコントロールしていくものです。

ある意味、好き勝手に走って良いのですが、そういうのが一番苦手~きっちりとしたペース走、距離走の方が好き~という方もおられますね。

方法論その4 坂道インターバル中上級編

その2のスピードを落とした坂道インターバルの発展形です。何が発展したのかといえば、ここまでの効果で、遅れていた脚が心肺に概ね追い着いてきたあたりから、更に上の機能向上を目指すというものです。

ようやく脚と心肺にイーブンで負荷をかけられるようになったので、今度はスピードレベルを上げて、両方にやや強めの負荷をかけていこうというものです。

脚が出来てこそ!の練習であり、その2をはしょって、ここからいきなり始めてしまうと、キツくて良い練習になっているような気はするものの、意外と思ったほどの効果が上がらないこともありますので要注意です。

 

まとめ

マラソンの持久力を構成する要素としての「心肺」と「脚」は違いを整理していくことが非常に大切です。ところが実際にはこれらを混同して『持久力』とみなしてトレーニングしているケースを散見します。

「速く走れば走るほどいい〜」
「長く走れば走るほどいい〜」

持久力も単純ではないので、その意味を理解して効果的なトレーニングを行うことが重要ですね!

 

※本記事はメールマガジン「BEST RUN!」のバックナンバーを修正加筆の上、再掲したものです。より詳しい最新情報を受け取りたい方はこちらよりご登録ください↓

September 10, 2019/トレーニング/