ランナー専門治療院のご案内

心拍トレーニングの基礎基本『理論編』
心拍計の効果的な活用法

以前メルマガBEST RUN!の中で心拍トレーニングの浸透度調査を実施したことがあります。この調査で集めたコメントを見ていると、「ああ、やっぱりな…」的なところが、多少・・・というか、けっこう!ありました。

 

《ランニングアンケートコメント》
●時々、心拍計が正しいのか、自分の感覚が正しいのか疑心暗鬼で走っている。レースはかなり高く出る様な…
心拍計がついているので、一応心拍数を見たりはしているのですが‥それを「使っている」と言っていいのかどうか‥微妙。気にはしているものの、実際にはどうするのがいいのか判ってません。
●最近、自分の周りでもちらほら心拍数を気にする人が増えていますが、意味があるのか良くわかりません。体感強度で楽だとか苦しいだとかだけじゃダメなんですかね。

などなど・・・

GPSウォッチの普及に乗っかる形で心拍計もだいぶ普及しているというか、持っているランナーは着実に増えているかと思います。また、アンケートの結果にもあったように、とりあえずは使っているという方も。

 

ただ、それがあくまでも「とりあえず」であり、とりあえず計測し、とりあえず見ている。とりあえずデータを保存している~という域をなかなか出ていないという現状も浮き彫りにされた感じがありました。

そもそもでいうと、心拍数をどう利用するのか・どういう意味があるのか~という点での理解がほとんど進んでいない~。そのため、活用出来るはずもない…というもったいない状況もまた明らかです。

これまでも「心拍トレーニング講習会」を何回か開催していますが、そこでも、どうトレーニングするのか~という以前に、やはりこの心拍数の意味するところというのがほとんど理解されていない~ということに気付かされます。

そういうことで~まずその基礎・基本というところをあらためてじっくりと解説していきたいと思います。

 

 

心拍数は何を意味するか?

運動強度と運動量

走行中の心拍数が意味するもの~それは端的にいって、運動「強度」です。この「強度」というのをきちんと理解しないことには、心拍トレーニングは始まりません。

世間一般に都市伝説的に支持されている「月間走行距離」は、運動「量」の指標です。ゆっくり走っても、速く走っても、インターバルでもLSDでも、200Kmは200km、300kmは300km。持久系スポーツの運動量は、専ら、距離や時間で測ることになるわけですね。

それでは強度は?これは、ペースや体感、そして心拍数で測ります。4分30秒/kmよりも、4分00秒/kmで走った方がペースが速い。そして、よりキツい(これが体感)、心拍数が多い。当たりまえですね。当たり前だからどうでも良い?いや、30秒/kmも違えば当たり前かも知れませんが、5~10秒/kmの違いならどうでしょう?そういうところが実は非常に重要なのです。

トレーニング強度

トレーニング中の運動強度を「トレーニング強度」といいますが、これがなぜ重要なのかというと、その効果(トレーニング効果)が違ってくるからです。走行距離の数キロの違いにはこだわるのに、心拍数10拍/分の強度の違いは気にもならない…というのはどうなんでしょう?って話です。

私達ランナーがトレーニングに求める効果~。持久力(スタミナ)とか、スピード持久力とか、スピードとか、筋持久力とかとか、そういうものを効率良く、そして効果的に向上させていくには、適切なトレーニング強度で取り組まなければならないものなのです。

ゆっくり走っても、追い込んで走っても、10Kmは10Km~。走行距離ならそうですが、ゆっくりの10Kmと、追い込んだ10Kmとではトレーニング効果はぜんぜん違います。

つまり、心拍トレーニングを実施する前になによりも大切なことは、どんな強度でどうトレーニングすることで、どんな効果の獲得を狙うのか~という理解です。その指標の1つとして、心拍数があるわけです。

強度と効果の関係

強度と効果~どんな強度でどうトレーニングすることで、どんな効果の獲得を狙うのか~。たとえば、LSDをすればスタミナがつき、インターバルをすればスピードがつく~みたいなところは誰でもなんとなくイメージできるかと思います。とはいえ、事はそんなに単純ではないというか、LSDとインターバルの二極に分かれているわけではありません。トレーニングの強度設定は、ざっくりでも5段階。更にはもっと細かく15段階くらいに分かれます。15段階ですよ!!

走行距離だけで考えてしまうと、ゆっくりでも速くても、1kmでも多く走れば良いことになります。

一方で、同じ距離を走るのなら、少しでも速い方が「効果的」だと考える向きもありますね。効果的?どんな効果なのか~というところが重要です。

まず、トレーニングは、速ければ速いほど、効果は上!だということはありません。求める効果によって、その、速い/遅い~つまりは、強い/弱い~の設定を変えていく必要があるわけです。インターバルをゆっくりやってもスピードはつかず、LSDを速いペースでやってもスタミナはつきません。

つまり、トレーニング計画を立てる・実践する~ということは、求める効果をまず明確にし、その効果を得るための強度設定をすることから始まるわけです。LSDをやるのか、ペース走をやるのか、インターバルをやるのかは、その手段に過ぎません。

そして、その思惑通りに実践出来ているのかどうか~。ここが重要ですね。求める強度設定通りにトレーニング出来ているかどうか~それを判断するのに、<心拍数>が必要なわけなのです。

 

 

心拍数の見方&読み方

心拍計の活用

最近の心拍計(心拍測定機能付きGPSを含む)は、単に心拍数を表示するだけでなく、<心拍ゾーン>みたいなものを出してくれますね。だいたい5段階くらい(4段階のこともあります)に分けられますが、要はZ(ゾーン)1は、非常に軽く、Z5は非常にきつい(最高)。そのトレーニングを、1~5の、どのゾーンで実施するのかによって、効果も効率も違ってくるわけです。

もちろん、強ければ強いほど良いわけではなく、適正ゾーン(適正心拍数)というのがあります。これを越えても、至らなくても効果は少なくなります。

これは持久系トレーニングの基本であり、頑張って強い負荷をかければかけるほど良いわけではなく、常に目的に応じた適正な負荷をかけるということを意識しなければなりません。~この点を理解しているかどうかが大きく成果を分けることになります。

まあ、心拍数(心拍ゾーン)というのはそのための指標に過ぎません。ただ、明確な指標になりますので、便利だというだけです。条件がすべて同じなら(そんなことは普通ありませんが)ペースだけでも出来ますし、機器や数字を使わず、体感強度だけでトレーニングする人もいます。(究極的にはそこに行き着きます)

そう、私達のトレーニングは、根性で踏ん張って頑張る!!というだけでなく(Z5のトレーニングをする場合は、そういうこともありますが)、求めるゾーンにトレーニングが上手いこと収まるように、上手にコントロールする!というところにポイントがあるわけです。考えてみれば、レースのペース配分だって同じことですね。暴走&失速パターンの多いランナーは、こういうところに気を付けなければなりません。

「求める効果」というのは、持久力(スタミナ)・スピード持久力・スピードといったところがあるのですが、そのあたりを、どういうタイミングで、どう鍛えるのか~という考え方・取り組み方がトレーニング方式になります。

心拍トレーニングをやろうとしても、トレーニング方式が定まらなければ、いつ・何を・どのようにするのかも定まりません。心拍トレーニングというトレーニング方式があるわけではなく、なんらかのトレーニング方式を心拍数(ゾーン)を指標に行うのが「心拍トレーニング」なのです。

ここをしっかり理解しないと、いざ始めようにも、どう始めて良いのか分からなくなってしまいます。実際、トレーニング方式なき心拍トレーニングの失敗というか、あまり効果的ではない例もけっこうありますね。

 

心拍計を効果的に活用できていない例

心拍計を使っているのに、あまり効果的ではないトレーニング例~そのほとんどは、やはりトレーニング方式と、心拍ゾーンをきちんと理解していないまま、心拍計をなんとなく使っているという場合です。

そもそも、トレーニングの基盤を「月間走行距離」に求めてしまうと、心拍トレーニングで求めていく、トレーニング強度という面は非常にあやふやになってしまいます。

なによりもまず強度!であり、適切な強度を保ってこそ。その次に、その強度でどれくらいの距離を走るのか~ということになるわけですから。

この「強度」という点では、いろいろな誤解もあります。まず簡単なところでは、<気持ち良く走れる心拍数>みたいな話を良く聞きますね。気持ち良く走れる心拍数が150拍だったから、その150拍をキープして走る~というような。

ただ、それならば、別に心拍計を使うことなく、常に「気持ち良く」走ればよいことになります。気持ち良いと感じるのは、ゆっくりでも速くても、人それぞれであるわけで、それと、「トレーニング強度によって効果が違う」ということは、まったくの別問題です。

次に、強度という意味の問題。すごい基本的なことですが~LSD3時間と、1000mを全力で1本~ どちらかが強度が高いと思いますか?

LSDも3時間もやるとぐったり疲れる。それなら1000mを1本やった方が負担は少ない~と考える人もいるでしょう。しかし、それも負担感とか、ある種の負荷とかいうことならともかく、「強度」ということでは異なります。強度は、明らかに1000m×1の方が上です。

LSD時の心拍数は、通常110~120拍程度。3時間もやると、疲労が出てきて、130拍に上がる~というようなこともあるかも知れませんが、それでも1000m×1をやって、170拍にも180拍にもなる域には到達するはずはありません。トレーニング強度が高い=心拍数が多くなるトレーニング~なのです。

LSDなり、ロング走なり、ミドル走なり、インターバルトレーニングなりに、効果的な心拍数がある!!それ以上でもそれ以下でも、効果は薄くなる~だからこそ、適切な心拍数でトレーニングする必要がある!

~これが心拍トレーニングの基本であり、それでは、何をやって、どんな機能を高めるのか~がトレーニング方式の違いだということになります。

適切な心拍数とは?

適切な心拍数

これには個人差があります。心拍トレーニングの最大のポイントは、それぞれのトレーニングに対し、自分にとって適切な(=効果的な)心拍数を求めることでしょう。そのことが分かっていないと、どんなに測定を繰り返したところで、何が何だか、どう作用するのか分からなくなってしまいます。

まあ、いろいろな計算式などもあるのですが、昨今の心拍数は、個人データを入力することで、心拍ゾーン(名称は、メーカーによっていろいろ違います)というのが出てくるような仕様になっているのが一般的です。

一般的にゾーンは5段階(メーカーによっては4段階のことも)に分かれて表示されたりしますね。今ゾーン2だとか、あら、ゾーン3に上がったとか…。単純に心拍数が表示され、それを見ていくだけでなく、ゾーンの推移を見ながら走ることが出来るようになっています。

さてここで、「適切な心拍数」というのがクローズアップされます。信じて取り組むトレーニング方式にもよりますが、たとえばeA式であれば、LSDはゾーン2、ロング走は、ゾーン3の下からゾーン3の上、あるいはゾーン4の下のあたりまで。ミドル走はゾーン3の上の方からゾーン4の中くらいまで~等々、それぞれのトレーニング方法に、求める心拍ゾーンがあるわけです。

このゾーンを、大きく上回ることも下回ることもなく、適切なゾーン内に心拍数が収まるように加減しながら走るのが、即ち、心拍トレーニングなのです。

調子が良いから~あるいは、つい調子に乗っちゃって…適切な心拍ゾーンを越えて、どんどんペースが上がってしまったり、体調が悪い・気分が乗らない・調子が上がらない・疲れてペースダウンしてしまったからといって、適切な心拍ゾーンに届かないペースで練習しても、どちらも効果的ではないということになります。

その日の気分でペースを決めたり、月間走行距離の増加だけに夢中になってトレーニングするのとは全然違うわけですね。

さて、整理すると~

●トレーニングには目的と効果があり、それによって適切なトレーニング強度(ゾーン)を選ぶ必要がある
●ゾーンを算出するには、自分の最大心拍数がどのくらいなのかを知る必要がある
自分自身の適正心拍数でトレーニングしてこそ、その効果を最大限に得ることができる

 

よく言うのですが~私は、トレーニング強度は、お料理の火加減に似ていると考えています。弱火でコツコツ煮込むお料理と、強火で一気に火を通すお料理とは違いますよね。トレーニングにもそういうところがあるのです。

それではどのくらいの火加減でお料理したら良いのか。いや、お料理の専門家ではないので良く知りませんが、トレーニングの場合、その「加減」を心拍ゾーンで表すことが出来るのです。

ゾーン2で走るべき練習をゾーン3でやってしまったり、ゾーン4でやるべき練習をゾーン3でやってしまっても、トレーニング効果は、十分得られることができるわけではありません。~この点をきちんと理解していきたいですね。

心拍トレーニングで知るべきことは、ガムシャラに一生懸命やることを良しとせず、上手に適切な加減をしていくことこそが、最も効果的・効率的なのだということです。

そして、トレーニングの鍵は、「いつ・どんなトレーニングを・どのゾーンで」実施するか!?です。どんなに心拍の理屈が分かっても、これが分からないとどうにもなりませんね。

 

まとめ

心拍数は「体の内なる声」でもあります。「きつい」とか「苦しい」といった主観的な情報にはどうしても感情が混ざるので、人横断的に用いることは本来難しいのですが、それに対して心拍数は客観度の高い指標と言えるでしょう。

とはいえ、個人差も大きいものなので、理解して実践し使いこなしていくということが大切です。データを集められる時代になった反面、それをどう活用するかという応用スキルまでは十分にカバーできていないのが現状です。なかなかややこしい考え方でもありますが、じっくり理屈を理解してもらえたら嬉しいです!

次回は『実践編』になります!乞うご期待!!

(本記事は2017年4月14日~6月 23日の期間にメールマガジン「BEST RUN!」で掲載された内容です。過去のアーカイブ記事の為、現在では新たな見解やデータが出されている可能性があることをご了承ください)

September 17, 2019/トレーニング/

ランニングに特化した治療院&トレーニングスタジオ

RUNNING CLINIC

RUNNING CLINIC(ランニングクリニック) はランナーの自己実現のために、ランナーの怪我やコンディショニング、パフォーマンスアップに対してトータルサポートを行う総合型のランナー専門治療院です。

治療院のご案内