ランニングシューズ市場にまた新たなメーカーが本格参入を発表しました。
富士通の塩尻和也選手がデサントとアドバイザリー契約を締結。デサントは12月よりランニングシューズのGENTENシリーズを販売。カーボンプレート内蔵のレーシングモデルGENTEN-ELは薄底シューズ
『自分は地面からの反発を感じやすい薄底派。今は故障中ですが、このシューズを履いて走るのが楽しみ』 pic.twitter.com/T4FpRDg06n
— SUSHI MAN (@sushimankawarai) November 14, 2019
スポーツギアとしてはアパレルやアクセサリーのイメージが強いデサント。そんな会社が本気でランニングシューズを作るということで、プレスリリースが行われました。約1時間に渡り、シューズに対しての想いや開発の経緯などが語られ、その後に試し履き会を実施。
今回はそのプレスリリースの様子と実際の試履感をお伝えしようと思います。
Contents
GENTENとはどんなシューズか?
今回発表されたランニングシューズはその名も「GENTEN」
漢字をあてるともちろん「原点」です。もともとランニグシューズとしての認知がほとんどなかったデサントがランニングシューズ市場に参入したのはなぜでしょうか?
デサントがランニングシューズ?
スポーツメーカーとしては非常に有名なデサントですが、おそらく多くの方が「デサントがランニングシューズ?」という感覚を持つことでしょう。”?マーク”がつくくらいランニングシューズのイメージがデサントにはないと思います。
しかし、デサントがモノ作りで大切にしている「人間が本来持つパフォーマンスを引き出す機能開発」という発想は決してアパレルだけにとどまっていたわけではなく、フットウエア事業への本格参入は2年以上前から検討されていたようです。
日本人のためのシューズを作りたい
ランニグシューズのマーケットが拡大する中で、最近ではグローバル展開を前提にしたシューズが多く見られます。いうなれば「万人に合うことを目指したシューズ」。
もちろん、その流れはいたって自然ですが、その一方で「日本人の足や日本人の走り方にあったシューズ」が真に開発されているものは意外と少ないのではないかとデサントの開発チームは考えていました。
新たにランニングシューズの開発に参加する上で彼らが大切にした想いは、まさにそこ。「原点に立ち返る」「ど真ん中のランニングシューズを作る」ということに着想しています。
新・薄型、新感覚の推進力
今回のシューズのKeyメッセージは「新・薄型、新感覚の推進力」です。そこにはシューズの機能性に走りを合わせるのではなく、本来備える機能(日本人の足・走り方)に合うシューズを真にデザインすることが目標として掲げられています。
ランニングシューズに必要なことは自身の足が持つ地面を蹴る力を無駄なく安定して推進力に伝えることと考え、とてもシンプルに作り込まれています。シューズにデサントのロゴマークすら入れない潔さにコンセプトの強さを感じました。
GENTENの特徴
シューズの大きな特徴は「フィット感」と「推進力」です。各社のシューズももちろんこのことは前提に開発は進められていますが、プレスリリースで発表されたデサントのこだわりをまとめました。
(1)フィット感
地面にしっかり力を伝え、無駄な力を使わずに走るためには、シューズが足にフィットしていることがとても大切です。そこで、土踏まずとかかとの部分を立体構造にし、包み込まれるナチュラルなフィッティングを作り出しました。また、足指をしっかり使うために、ワイズ(足幅)を広く取っています。履いた瞬間に他社のシューズよりもやや大きめに感じましたが、それはシューズの構造のためでした。
フィット感へのこだわりは非常に強く、今回は「フットラスト(足型)×パターン×デザイン×素材」の組み合わせることで、フィット感をつくり出していると説明してくれました。履いた瞬間を例えるなら、しっかり締め付けられる”タイトフィット”ではなく、足にスッと馴染む”ジャストフィット”でしょう。
(2)推進力
推進力を作るため、一般的にはドロップという構造が採用されています。ドロップとは前足部とかかとの高低差の事をいいますが、シューズが前方にかけて低くなっている事で、体が前に進む推進力を得ることができます。
最近では、船底のようにアーチを描くようなものや、急斜面タイプのドロップが多いのですが、GENTENでは「フラット→ドロップ→フラット」という中足部だけに傾斜がつくような構造になっています。これによって接地時や蹴り出しの瞬間はしっかり地面を捉え、重心移動が起こっている立脚中期には前への推進力が生まれるようになっています。
GENTENを実際に履いた感想
ここからは、実際にGENTENを履いてみた率直な感想をまとめていこうと思います。主観な評価になってしまいますが、出来るだけバイアスがかからないように、みなさんの参考になるようなフラットな情報をお伝えしていきます。
GENTENーEL
EL(Eliteエリート)の名前の通り、ターゲットはトップ選手(実業団、学生など)を対象にしたシューズです。ミッドソールにはカーボンプレートが挿入されていますが、現在ランニングシューズ界で注目されている「厚底×カーボンプレート」とは異なり「薄底×カーボンプレート」という構造になっています。
試履感として率直な印象は「ソールが非常に硬い」ということ。ただそれは衝撃を受けるというよりも、地面にしっかり蹴る力が伝わるという意味での硬さです。陸上競技選手やかつて陸上競技をやっていたランナーであればトラックを走っている時にスパイクが地面を踏みしめる感覚に近いのではないかなと感じました。
カーボンプレートによって強い反発をもらっている感覚はなく、しっかり自分の足で蹴らないと前に進みません。ただ、ミッドソールに挿入されたドロップ構造が体を前に進めることを補助してくれる感覚がありました。
アウトソールはグラフェンという薄くて硬い特殊素材を使っています。ソールの耐用走行距離は500kmほどとのことでしたが、あくまでメーカーが想定する摩耗が起こる走行距離ということなので、実際にはまだかなり履くことができるでしょう。
GENTENーRC
RC(Raceレース)のターゲットは一般シリアスランナーです。主にフルマラソンで3時間前後を目指すランナーが履くレースシューズを想定しており、長時間&長距離の走行を前提としたシューズになっていました。
ELに比べるとかかと部分のホールドはかなり強く、フィット感をより重視したような作りになっていました。ELはソールの硬さを感じたのですが、RCはそこまで硬いという印象はなく、長時間のランニングでも後半に足を残せそうだなというのが率直な試履感です。
今回は500mほどの試し履きだったので、参考程度の感想になりますが、履いた感じのストレスはほぼなく、実際に履いてロング走などを試してみたいなと感じました。
GENTENーST
ST(Speed Trainingスピードトレーニング)は一般ランナー向けに作られたタイプのシューズです。こちらはELの構造に似ていますが、カーボンプレートが入っておらず、代わりに反発性の高いミッドソールを採用しています。
ST=スピードトレーニングと称されていますが、トレーニングで走り込むケースや、陸上を始めたばかりのジュニアのエントリーシューズとしても重宝しそだなと感じました。
試履感はRCに近く、かかと部分がかかりホールドされている感じ。足を入れた瞬間にしっかりフィットするので、実際に走っていてもシューズ内で足がブレて余分なストレスを受けにくい構造になっています。
まとめ
昨今の大学駅伝は「戦国駅伝」と形容されますが、ランニングシューズ市場もまさに「戦国時代」と言えるのではないでしょうか。各メーカーが様々な研究を重ね、独自の技術を投入しランナーの走りをサポートしようと試みています。
各社のシューズへのこだわりや想いを聞くたびに、スポーツを愛する純粋な気持ちが垣間みえて、いつも清々しい想いになります。メーカーやシューズごとに優劣をつけるのは難しい・・・というよりも無理なんじゃないかなと思っています。
結局大事なのは評判ではなく、実感。ランナーの足は十人十色なのでどんなシューズが合うかは実際に履いてみないとわかりません。ランナー自身が履き心地を確かめて、その上でシューズを選択できるような状況が好ましい(本来在るべき形な)のではないかなと思います。
こういう新しいものが出るたびにいつもワクワクします。どういう風にシューズの開発が進んでいくのか、大局を楽しみにしていていきたいと思います。
November 15, 2019/ニュース/NEWSデサントランニングシューズ