鎌倉でランニングイベントを行ってみて感じた「人」と「地域」のつながり

東京から電車で1時間。

旅行というにはやや近く、かといって毎週のように行ける場所ではないのが「鎌倉」の印象ではないでしょうか?誰もが社会の歴史の授業で習い、日本でも有数の観光地である鎌倉ですが、実はビジネスの面でも注目されていて、「鎌倉資本主義」と銘打って面白い企業が集まる場所としての認知が広がりつつあります。また、海にも山にも恵まれ、風や空気を肌で感じられるからこそ、人々の心の中にゆとりを作ってくれる気がしています。

鎌倉に活動拠点ができて約1年がたちましたが、その間に仕事の合間を見つけて色々なところを走りました。そんな中でいつかはここでランニングイベントをやりたいなぁという考えに及んだのは、自然な流れだったと思います。それが形になるまでには予想以上に時間がかかってしまいましたが、その分、地元のヒトや企業との繋がりは深くなっていきました。先月9月に行われた「鎌倉ラン」はそんな様々な想いの詰まったイベントです。

4月に引き続き今回で2回目。手前味噌ながら非常にほっこりしたイベントになったと思っています。イベントを通して感じたことや考えたことがとてもたくさんあったので、今回はイベントの紹介と合わせて書き進めていきたいと思います。

 

なぜ鎌倉なのか

四季を感じる土地

そもそもなぜ鎌倉という土地をランイベントの場所にしたのか?

都会に住んでいたとしても、狭い日本であれば自然溢れる場所に足を伸ばすことはそんなに難しくありません。包み隠さず正直に答えるのであれば、鎌倉でなければならない理由があったわけではなく、都会に住んでいるランナーが自然を求めて郊外のイベントに参加するのであれば、自分が気に入った場所で構わないと僕は思っています。

ただ、縁もゆかりもない場所に自分たちがにわかに足を踏み入れてイベントを行うということには少し違和感があり、その土地の歴史や雰囲気、特色などを肌身で感じないと、言葉にも説明にも説得力が伴わないなと思っていました。季節を一回りして自分の肌で海や空の変化を感じたからこそ伝えることができる魅力が少しずつ分かってきて、「自分たちがやるなら鎌倉」と堂々と言えるようになったと思っています。

もちろん長年鎌倉に住む方には到底及びませんが・・・(苦笑)

リトリートという着想

鎌倉といえば、かつて鎌倉幕府が開かれた歴史ある地域です。山と海に囲まれた特殊な地域だからこそ、敵が攻め込みづらく、幕府を作るにはうってつけの場所だったそうです。至るところに神社仏閣が散在し、その数は地元住民でも全てを完全に把握している人は少ないんじゃないかと思うほどたくさんあります。

今回のイベントの共同主催者は加納由理さん。彼女はマラソン元日本代表で引退後はビジネスの世界に活躍の場を移し、様々なことにチャレンジしています。そんな加納さんがふと漏らした言葉が

「心を病むトップアスリートがあまりにも多い」

でした。彼女自身の経験も含めてのことでしたが、特に陸上競技の長距離選手は真面目で内向的な選手が多いため、記録が行き詰ったり、怪我をしてしまった時に、どこかに逃げ場を作ったり外に吐き出すということが苦手で、どんどん悪い方向に気持ちがシフトしてしまいがちです。もちろん個人差はありますが、そんな「逃げ場」や「逃げるきっかけ」を鎌倉で作ってあげられたとしたら、救われるアスリートがもっといるんじゃないかなと二人で話しながら漠然と考えていました。

最近認知度が上がってきた言葉を使うとすれば、「リトリート」。直訳すると「隠居」「隠れ家」「避難」ですが、実際には「日々の忙しい生活から離れ、自分とゆっくり向き合う時間を作る」という意味で使われています。悩みを抱えるアスリートが鎌倉にきて色々なものから一時的にでも解放されて、自分を取り戻していく「リトリート」。トップアスリートに限らず、多忙な毎日の中で走る市民ランナーの方にとっても、きっと有意義なものになるに違いない!

そう思ったことが「鎌倉ラン」のきっかけです。

 

繋がっていった鎌倉の縁

はじまりは「カマコン」から

ご縁は突然現れるものです。

鎌倉では業種を問わず様々な企業が集まって、その中から事前に選ばれた2〜3組がビジネスプロジェクトを発表し、そのプロジェクトの課題を”ジブンゴト”と捉えてみんなでアイディアを出し合うブレスト会議が毎月定例で行われています。それが「カマコン」。毎回80〜100名ほどのメンバーが集まり良い意味で喧々諤々しながらブレストが盛り上がります。

3人寄らば文殊の知恵。それが10人、20人・・・と集まれば指数関数的にアイディアが増えていくものです。そんな初参加のカマコンで「シークレットベース」の古川さんのプレゼンを聞きました。古川さんは自分が経営する民泊を使って鎌倉で”開眼”物語という「鎌倉で人生が変わる体験を提供したい」と熱く語っていて、その時に自分たちがランニングでやろう!やりたい!!と思っていることと似ているなぁとピンときたことをよく覚えています。その会場では軽いお話し程度でしたが、カマコンが終わってからすぐに連絡をとり、後日じっくりお話させてもらうことができました。

シークレットベースのオーナーである古川さんは、もともと東京でサラリーマンとして激務に明け暮れる毎日だったのですが、ある時体調を崩し休職。心と体の休養を求めて行き着いた先が鎌倉で、そこで出会った「人」「体験」によって人生が変わり鎌倉に移住することになったそうです。

滲み出る優しい雰囲気と、テキパキと仕事をこなし、いろんなアイディアにもスピーディーに対応していく姿がとても印象的でした。シークレットべースを使って一緒に何かやりたいという話もありましたが、アイディアをまだ具体的に形にしきれておらず。ただ、古川さんから色々なモノやコトを紹介してもらったり、ヒトと繋いでもらったりしました。


▲鎌倉の材木材海岸でSUP体験(注:仕事ですww)


▲”開眼”物語のキックオフミーティングで鎌倉で行う「リトリート」の着想をプレゼン

▲鎌倉でリモートワークの体験を行うイベントの中で実施した海岸散歩

広がるつながり

想いは口にしていくものだなと感じたのはちょうどその時。漠然としたアイディアでしたが、そこからつながりはどんどん広がっていきました。葉山で「森と畑の学校」を営む伊藤さんには、野良仕事が無心な状態を作るので、悩めるアスリートにはいいんじゃないかとか、山小屋に止まって手作りピザを作って食べるのもいいと思うなどのアイディアもどんどん出てきました。これもいつかは形にしたい!!


▲伊藤さんは脱サラして葉山の山を開墾し、無農薬農園を作ったそうです。

素敵な出会いに恵まれました。どれも形にしていけたらどんなに面白いだろうかとワクワクしながら考えていましたが、そんな中で具体的に話がまとまったのが今回鎌倉ランの宿泊施設として利用させてもらった「Webase」です。もともと民間企業の保養所だった施設を2016年にフルリノベーションして営業をスタート。宿泊施設が少ない鎌倉の中で大人数が泊まれて、ヨガスタジオや大浴場を備えた場所は少なく、宿泊イベントをする施設としてはぴったりでした。

当初の「リトリート」という着想を活かしつつ、「ランニング」を掛け合わせるとすれば何ができるかを考えていく。ちょっとずつ進化を続けるイベントにしよう〜。それが一つのテーマでした。

 

鎌倉ラン

ここからは実際にやったイベントのプログラム内容をご紹介してきます。イベントの中身をメージしてもらえればと思うので、写真を中心にご覧ください。

ビーチエクササイズ(4月)

普段味わえない場所での練習といえば、やはり砂浜を使ったエクササイズ。地面が不安定になるので、足関節周辺や足の裏を上手に使って体をコントロールしながらランニングドリルを行いました。普通に走っているだけでも体に負荷がかかるところなので、みなさん大苦戦。実際に砂浜を使ってトレーニングするトップアスリートもいるくらいなので、この環境を上手に利用してうまくエクササイズを行うことはとても有効です。

 

江ノ島ラン(4月)

鎌倉での王道ランニングコース!海岸線に沿って走るコースは絶景で見通しの良いロケーションです。かつてスラムダンクで有名になった江ノ電の有名な踏切もあり、多くの観光客がいつも集まっています。運が良ければ江ノ電がちょうど通過するタイミングに出くわすので、非常に絵になるコースです。

 

披露山公園〜ビーチラン(4月)

鎌倉の小高い丘の上にある披露山公園を目指し、そこから砂浜を走るバリエーションに富んだコース。海と山がセットになっている鎌倉だからこそ可能となりました。砂浜をジョグするだけでも普段とは違う負荷がかかるので、すぐに筋肉痛になった方もいました。

 

鎌倉〜葉山ロング走(9月)

9月の鎌倉ランではロング走を実施。走力に合わせて2グループ作り、20〜30km走りました。秋のフルマラソンシーズンに入る直前だったので、みなさん上手に練習を活用されていました!海岸線を走ったり、プチトレイルに入ったり、小高い丘を登ったり、トンネルをくぐったり・・・これも鎌倉ならではのコースになったと思います。

魔女トレ&鎌倉街ラン(9月)

9月の鎌倉ランでは、プロダンサーの西園美彌(にしぞのみや)さんをお招きして、魔女トレを行いました。魔女トレとは、バレエダンサーが日常的に行う体づくりのトレーニングやコンディショニングを他のスポーツに応用したものです。このトレーニングをやると魔女に魔法をかけられたように体がみるみる変わる!ということで、この名前をつけてもらったとか。今回はランナーにとって大切な「足の裏のコンディショニング」を中心に、体の使い方をプロダンサーの視点で非常にわかりやすく解説してくれました。西園さんの詳しいプロフィールはこちらをご覧ください→西園美彌オフィシャルHP

朝ビーチ散歩(4&9月)

2回行った鎌倉ランはいずれも天候に恵まれて気持ちよく朝のビーチ散歩に出かけることができました。朝の海はまた違った顔を見せてくれるので、これも自然を感じる瞬間です。

ランニング講習会(4&9月)

夕食後にヨガスタジオを利用してランニング講習会を開催しました。普段はなかなか聞けない加納さんのトップアスリートならではの経験談や、トレーニングのコツなどについて話をしています。

施設、食事(4&9月)

最後にWebaseの館内や食事の写真をご紹介します。宿泊イベントだからこそ、泊まる場所も非常に大切です。日常を離れて時間を過ごすということは大きなテーマだったので、各々自由に過ごせる時間やスペースも色々ありました。

 

これからの鎌倉ラン

「リトリート」に着想し、そこから人が人をつなぎ、アイディアを出し合ってスタートした鎌倉ラン。

まだまだ不十分なところも多いですが、それでも「人」と「人」がつながり、「人」と「地域」がつながることで面白いことがきっとできてくると思っています。

これからどう進化&発展していくかは良い意味で不透明です。同じことを繰り返してマンネリ化したり、やる方の情熱が削がれてしまったイベントであればやらない方がいいと思っています。そういうものであればきっとまた新たな魅力が生まれてくるのではないでしょうか。自分達だけでなく、参加者も一体となってアイディアを出し合ったりしながら育ってくれたらなと思います。

次回は来年の3〜4月に開催予定です。みなさんのお越しをお待ちしています!

October 5, 2019/ニュース/