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トレーナー目線で語る「もう一つのMGC」

マラソングランドチャンピオンシップ(以下MGC)が終わりました。

僕は陸連のトレーナーという立場でフィニッシュ救護を担当させてもらいましたが、東京開催のオリンピック・パラリンピック1年前のシュミレーションとして貴重な大会だったので、個人的にも救護チーム的にも課題に思ったことはきちんと振り返って、これから色々なことを想定した準備をしていきたいなと思ってます。

救護という立場はミーハーになっちゃダメなので選手を追い掛けるのではなく、選手の異変に敏感にならなくてはいけません。当日は緊張感漂う中で、準備や打ち合わせを進め、選手がスタートラインに向かうまでの間も、戻って来てからも何か異変がないかよく観察していました。今回はこの酷暑の中ながら大きなトラブルもなく終わりましたが、もちろん全てが○というわけではなく、こうしなきゃいけないなと思うところも色々ありました。来年の大会当日には男子で今回の3倍、女子で今回の9倍の選手が参加することになるので、”想定外が起こることが想定内”という前提で準備が必要でしょうね。暑さ対策が特にかな・・・

そして、一息ついて自宅に戻り録画していた中継を見返していると、今度はレースの中身に釘付けになっちゃいます。まだまだランナーですから(笑)現地では選手を迎える準備をバタバタと進めていたので、途中からレース展開を確認する余裕はなかったのですが、じっくり中継を見ているといろんな思いが溢れてきます。それをふと文字に残しておきたいなと思ってパソコンに向かい記事を書き始めました。

いつかは編集長権限(笑)を使って、個人的な想いをつづるコラムを書こうと思ってましたが、ちょうどいいタイミングです。あくまで僕目線の主観が混じったコラムなので、悪しからず。全てをそのまま解釈するとお叱りや批判を受けるかもしれませんが、そういったご意見を恐れずに今の自分の立場で考えることを素直に書いていこうと思います。

 

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そもそも、MGCは「選考方法の一本化(明確化)」「マラソン競技力の強化」という意味合いでスタートしました。これまで指摘されてきた選考にまつわる不透明さを取っ払い、選考方法を明示したのは大きな決断だったと思います。それに加えて運営面でいえば「本番のシュミレーション」という側面もありました。来年は自国開催のオリパラということで、本番を想定してどういった運営が必要かを考える大事な機会になったと思います。いろんな観点から非常に意味のあるものでした。

そんなMGCの出場権を獲得したのは男子が31名、女子が12名の計43名(欠場3名)。誰でも出られるわけではないレースだからこそ醸し出される緊張感や特別感が現場には漂っていました。ここにいたるまでにクリアしなければいけない壁は決して簡単なものではなく、いろんな想いを抱えてスタートラインに立っていたことでしょう。

スタートに向かう選手たちの体は見惚れるくらい引き締まっていました。いや、「絞る」なんて生易しいもんじゃないかな、、、僕には「削る」といった感じにすら見えたし、ここに至るまでに過酷なトレーニングをしてきたことが容易に想像できました。オリンピック並みの緊張感もあったかもしれません。イベントとして大きく盛り上げたことで、この2年間、選手たちの一つの目標になっていたと思います。

 

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今回の参加者の中で個人的に注目していたのは同年代の男子選手。最年長の中本さんをはじめとして、岡本、今井といったいずれも実力派ランナーが出ていましたが、今回は有力候補として名前があがることは少なかったように思います。

皆一様にこれまで、オリンピックや世界選手権をかけて幾多の戦いをくぐり抜けてきたトップランナー。いろんな怪我や挫折、苦労を乗り越えてきた選手たちです。輝かしい経歴があったとしてもそれはあくまで”表の出来事”であり、見えない(見せない)部分にいろんなエピソードがあったことでしょう。もちろん僕はその全てを知っているわけではありません。

同年代ということはみな30代半ばのベテラン選手。若い選手が次々と台頭し、マスコミの注目がそういった選手にうつるなかでも粛々とトレーニングをつみ、このMGCの舞台に立つ資格を獲得しました。心から尊敬します。彼らがこれまでに見せてくれた活躍、マラソン界への貢献度は計り知れず、今の男子マラソンの盛り上がりに繋がっていることは間違い無いでしょう。僕にとって同年代の活躍は本当に刺激になるもので、記録を比べると「ライバル」なんて言えませんが、彼らも頑張ってるから僕も自分のフィールドで頑張ろうと思ったことは何度もあります。だからこそ、応援したい気持ちになるし、感謝したい気持ちでいっぱいです。

結果はもう分かっているものの、中継の録画をみながら頑張れと心の中で叫び続けました。

 

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ゴールに帰ってきた時の彼らの顔はスタート前よりも一層絞れた表情をしていました。2時間ちょっとのレースですが、酷暑の中を走り、発汗と疲労によってレース後は違った表情を見せるのがマラソンです。表情の中にはただ単純にその日のダメージだけではなく、厳しいトレーニングを数年、数十年と積み重ねてきたからこそ出る「表情」がそこにはあったと思います。

疲労困憊のなかでもけっして目の力は衰えず。戦いを終えた男たちの目にはMGCという大舞台の中で真正面からぶつかって出た結果を受け入れようとする潔さを僕は感じました。彼らの心のうちはわからないけど、勝負の世界で生きてきたからこそ、受け入れなきゃいけな事実があることはきっと分かっているんだと思います。

 

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勝つことだけが人生じゃない

勝負世界ではそんな甘いことはもちろん言ってられないのですが、齢を重ねながら長く代表選考の舞台に立ち続けてきたベテラン選手にはその言葉を送っても許されるのではないかなと思っています。

彼らが今後どういった競技生活を過ごしていくのかは僕には分かりません。去就という意味を含めた言葉を使ってしまったことを不快に思われてしまうかもしれませんが、いつかは競技からの引退を考えなければならない日が来ることでしょう。それがすぐじゃないとしても、そうなった時には同じ世代のランナーとして長くトップで活躍してくれた彼らに心から敬意を表したいなと思います。

 

東京オリンピック開会式まであと312日!!
(2019年9月16日時点)

September 16, 2019/コラム/

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